受験を決める前に知っておきたいこと
■大きな負荷がかかる中学受験。本当にやりますか?
中学受験の準備は、高学年となる小学校4年生くらいから始める子どもが多いですが、中にはもっと小さいうちからスタートする子もいます。
いつからスタートするかは、受験する本人とその保護者の意図によりますが、いずれにしろ、受験する子どもに大きな負担になる事は間違いありません。
そもそも中学受験をするレベルの学力は、中学生が公立中学で週5回6時間×3年間勉強する内容と、ほぼ同じ量を習得しなければ追いつかないレベル。
しかも、通常の学校の授業と、家に帰ってからする宿題や予習・復習に加えてその量の学習を強いることになり、遊び盛りの子どもにとって、心身ともに大きな負荷になることを、今一度考えてみてください。
つまり中学受験をするということは、子どもも保護者も相当な覚悟と決意が必要であり、周りの理解や援助も得なくてはなりません。また、進めている途中で子どもが挫折をして勉強嫌いになる、自分がダメな人間だと思いこんでしまう、親子関係が崩れる・・・などの可能性も無きにしもあらず。
それでも中学受験をするのであれば、受験勉強を始める前にそのメリットとデメリットを整理して、受験生とその保護者が、なぜ受験するのか、何のためにがんばるのか、その理由を明確にして共有することが大切です。
■中学受験をする理由。メリット・デメリットを知る
それでは、なぜ中学受験をするのか、どんなメリットがあるのか、逆にどんな注意点があるのかを確認しましょう。
中学受験をする理由を再確認
①大学進学に有利
●保護者が中学受験をさせる最も多い理由のひとつが、難関私立大学や人気私立大学に推薦入試で進学できること。私立中学であれば、高校、大学と併設されている場合も多く、例えば慶応、早稲田、明治、青山、立教、法政、学習院などの大学は、各附属高校、附属中学出身者の占める割合がかなり高くなります。
●また、中高一貫校では、高校の受験勉強に分断されない教育を6年間継続して受けることができるため、進学校では高2までに高校の教科書を終わらせ、あとは本格的に大学受験対策ができるため、難関国立大学への入学も有利になると言えます。
②一貫した教育方針の下で学力と人間力を伸ばせる
●中高一貫校ではそれぞれ確立した教育方針があり、私立校であれば「自主自律の精神を育む」「他者のために尽くす」、公立であれば「国際社会で活躍できる」「リーダーとしての資質を持つ」人材の育成などが方針として掲げられ、中高6年間でその学力と人間力を磨くことができます。
●また、私立一貫校では、先取り学習、探求型授業、ICT授業、英語を強化できる授業など、生徒を横並びに教育しようとする公立中学校にはない充実したカリキュラムがあり、子どもの個性を伸ばせる環境があります。
●その学校の教育方針に親子とも納得するのであれば、6年間しっかりと継続して教育を受けることはとても有意義と言えます。
③最新の施設や設備、時代の先端を行く授業、豊富な学校行事
●私立の中高一貫校では、施設や設備が充実した最新の環境や授業で勉強ができることは、生徒集めの重要な要素でもあることから、各学校ともこれらの充実にかなり力を入れています。
●冷暖房完備、全天候型グラウンド、メディアセンターなどを配備した学校や、海外の大学進学を目指した国際学級を設置しているところ、アクティブ・ラーニング・キャリア教育・体験学習の導入など、子どもが社会に出てからも活躍できる人材育成を目的とした教育が行われています。
④新たな環境で再スタート
●元々地元の友人関係がうまくいってないなどの場合は、中学受験により、新たな環境で心機一転やり直すというのも得策です。
中学受験で注意すべき点
①教育方針や学校が子どもに合わない場合もあります。合わなかった場合、簡単に変更はできず、6年間辛い思いをさせてしまう場合もあります。
②中学受験は、子どもの負荷だけでは無く、保護者にも負担が多く、資金面なども充分に計画を練っておく必要があります。
③子どもの性格や学力に見合った選択をしましょう。
以上、中学受験をする際のメリットや注意点を挙げましたが、最も大切なことは、「子ども自身の気持ちや能力を見失わないこと。」ともすれば、親が周りに影響され、さらに上へと子どもを駆り立ててしまうケースや、周りの期待に押しつぶされて子どもが精神的に追い込まれてしまう・・・なども多々あります。
親の心配もわかりますが、実際に受験するのは子ども自身。受験を決める前も、受験勉強をスタートさせた後も、常に子どもの気持ちを優先しながら進めるようにしましょう。
受験することが決まったら
■中学受験をすることに決定!どこを受ける?
受験前に、その理由を明確にし、お子様と充分話し合った上で中学受験をすると決めたら、次はどこを受験するかを決めます。
子どもの性格や将来を考えて、親が勝手に決めがちですが、あくまでも主役は子ども。どこを受けるかも、お子様の意志をなるべく尊重するように心がけましょう。
志望校を決めるには?
①親・子ども両方の意向に合った学校を幅広くピックアップ
●親と子どもそれぞれが、どんなことをその学校で学び、どんなことをやりたいか、どんな人になりたいか/なってほしいか等を自由に意見交換し、その希望に添った教育方針の学校を、まずはたくさんリストアップします。
●さらに通学可能圏内にある学校に絞り込み、それぞれの入学条件、受験に必要な学力レベルなどを、受験情報誌や各学校のパンフレット、WEBサイト等で調べます。
②実際に学校を訪問してみる
●学校の施設や雰囲気を知るには、実際に行ってみて確認するのが得策。学校説明会や文化祭、オープンスクールなど、体験型行事に子どもを連れて行き、その感想や相性等を確認します。
●また、実際に通っている生徒や、その学校を知っている人から情報を聞くのも有効です。生の声の情報は、一般的には知られていない事などもあり、かなり参考になります。
③比較して志望校を絞り込み
●実際に受験勉強を始める時期にもよりますが、例えば3~4年生くらいから始めるのであれば、まだ1校に決定する必要もなく、複数の候補を残しておいても良いでしょう。
5年生になったら1~2校程度に絞り込み、6年生の夏か遅くとも秋までには、最終的な志望校の絞り込みをしましょう。
その間にも色々な情報収集をして比較検討しながら、最終的には、受験生本人の意志を最優先して絞り込みます。
いよいよ受験勉強開始
■入試までのおおまかな流れを知り、逆算したスケジュールづくりを
中学受験勉強をいつからスタートさせるかにもよりますが、効率的な受験生生活を送るためにも、受験勉強をスタートさせた時から入試のその日まで、各学年、各学期でどのような過ごし方をするか、どのくらいの目標まで達成させるかなどの、おおまかな流れを作り確認しておきましょう。
ほとんどのお子さんが、塾に通うことから始めることが多いのですが、通塾によって生活リズムが変わりますので、塾の学習、習い事、遊びなどの時間の配分や使い方を決めて、子どもが過ごしやすいリズムを見つけ、きちんと勉強ができる環境を早めに作ってあげることが大切です。
3~5年生の受験勉強は、塾に通いながら、夏・冬・春休みの講習を受けたり、模試を受けたりすることで自分の実力を把握し、都度次の目標を設定して進めて行きます。塾での学習も含めて、1日おおよそ3~5時間を目安に勉強に取り組ませるようにしましょう。
6年生になったら本格的な受験勉強のスタート。6年生の2月~翌年1月の受験までの約9ヶ月を、①~夏休みまで ②夏休み ③~冬休みまで ④直前 という4つのタームに分けて、それぞれの時期に何をどのように取り組むかを、6年生になる年の1月から計画を立てます。
6年生の1年間は、受験生もかなり忙しいですが、その親も、子どもの勉強や体調の管理、情報収集、学校説明会の参加等、慌ただしい1年となります。
下記におおまかな流れを書きましたので、お子様の現在の状況等を把握しながら、受験までのスケジュールを作りましょう。
【3・4年生のスケジュール/5年生のスケジュール】
3・4年生 | 5年生 | |||
春 | ●通塾スタート | 進学塾では通常2月から新学年 | ●ここから通塾も可能 | |
●春休み:春期講習 | ●春休み:春期講習 | |||
●<小4>公開模試スタート | 学習の目標を立て何をするか決める | ●塾の面談、保護者会 | ||
夏 | ●夏休み:夏期講習 | ●夏休み:夏期講習 | 夏期講習 | |
夏休みの目標を立て実行 | 夏休みの目標を立て実行 | |||
秋 | ●学校見学 | 文化祭・体育祭は5~6月、9~11月に多い
説明会や見学会、オープンスクールは通年開催 |
●学校見学 | 6年生になると忙しくなるので、なるべく5年生のうちに調べておきたい |
家庭学習、振り返りの習慣を付ける | 学習内容が硬度になるので、復習強化 | |||
冬 | ●冬休み:冬期講習 | ●冬休み:冬期講習 | 冬期講習 | |
今までの勉強を総復習 | ||||
●第1志望校を選定 | この時期から、6年生の夏頃までに最終決定したい |
【6年生のスケジュール】
6年生 | 保護者 | |||
2月 | ●いよいよ受験学年 | ●1年の流れを確認 | いつ何があり、どのようにしたら良いか、入試本番までの流れをつかむ。
入試動向なども確認。 お金の準備等もしておく |
|
●学校別対策講座 | 塾によっては対策講座を設けているところもあり、志望校合格にくけての対策を組むことができる | |||
3月 | ●実力判定テスト | 現状での実力確認⇒今後の対策 | ||
4月 | ●春休み:春期講習 | |||
5月 | ●学校見学 | 説明会や見学会、オープンスクールにはなるべく参加したい | ●学校見学 | 子どもと一緒に参加して、子どもの意向を把握する |
6月 | ●志望校選別テスト | |||
7月 | ●志望校判定テスト | ●夏の体調管理 | 食欲を失いがちな夏だが、栄養のあるものを摂らせ、睡眠もさせる | |
8月 | ●夏休み:夏期講習 | 今まで勉強してきたことの振り返り | ||
9月 | ●合格判定テスト | 9月から合格判定テストが始まり、多くの受験生の中での自分の位置を知り、今後の対策を組む | ●最新の情報収集 | 9月の説明会は入試要項の発表もあるので、積極的に参加して情報収集 |
●第1志望校決定 | ●第1志望校決定 | あくまでも子どもの意向を優先 | ||
10月 | ●過去問の取組開始 | 本格的に過去問に取組だし、出題傾向や難度を知る
第1志望校は過去3~6年分、併願校は過去1~2年分が目安 |
●全受験校の決定 | 遅くても12月頃までに全ての受験校を決定する。願書は年内に取り寄せる |
11月 | ||||
12月 | ●冬休み:冬期講習
入試直前演習 |
実力を得点につなげる実践力を養う | ●願書の記入~出願 | 書類をそろえて出願。学校の動きを確認 |
1月 | 入試本番 | |||
志望校合格 | 入学手続き |
6年生の1年間は計画的に進めよう
■4つのタームで、それぞれ目標設定を!
本格的な受験勉強をする6年生になったら、1年を下記の4つのタームに分けてそれぞれ目標を設定し、達成度を確認しながら本番に向け準備を進めます。
①2月~夏休みまで :基礎固め
この時期は、今までやってきたことを再度復習し、「基礎をしっかりと身につける」時期。すべての教科で、広く、まんべんなく、漏れの無いように基礎固めを行います。
②夏休み :弱点補強
この時期は、苦手な分野や弱点を攻略する時期。さらに、合格判定テスト等で自分の現在の実力が把握できていたら、志望校に合格するために補強しなければいけない事を重点的に学習し、対策を組んでいきます。
③~冬休み :応用力アップ
この時期に入ったら、志望校を念頭においた学習を進めます。例えば過去問を解いたり、出願傾向をとらえて出そうな分野を重点的に学習するなどの対策を行います。
④直前 :体調管理に注意
直前は、冬休みから入試本場までの時期ですが、最後の追い込みとして、さらに絞り込んだ苦手分野の補強、過去問回答を重点的に行います。ただしこの時期最も重視したいのが、体調管理。寒くなり風邪が流行る時期なので、防寒対策をしっかり行い、食事や睡眠時間も充分とりながら、生活リズムを守るようにします。
いよいよ受験本番!焦らず平常心で
■入試前日の準備
入試当日は慌ただしくなることが予想されるので、前日までにある程度の準備をしておくことが大切です。以下に前日の準備と心がまえをまとめました。
①持ち物と天気、試験会場までのアクセスを確認
お子様に持たせる物と、保護者が持っていく物を前日までに準備。また、天気によって交通機関に支障が出る可能性もあるため、事前に確認をしておきます。
さらに、試験会場までの行き方やかかる時間も再チェック。ラッシュ時を避けて余裕を持って会場に着けるよう逆算したスケジュールを確認しておきます。
【お子様の持ち物】
●受験票 ●多めの鉛筆 ●消しゴム2個
●上履きと収納袋 ●ハンカチ・ティッシュ ●マスク
●水筒 ●水梨で飲める下痢止め ●チョコなどのお菓子
●防寒できるカーディガンなど ●ホッカイロ ●お守り ほか
【保護者の持ち物】
●受験票や願書のコピー ●雨具・防寒具 ●常備薬 ●食べ物 ほか
②勉強はあまりさせずに早く寝かせる
前日は早めに食事を取り、入浴するなどで心身ともに落ち着かせ、勉強はほどほどに済ませて、早く寝かせるよう心がけます。
■入試当日の心構え
①時間に余裕をもった行動を
受験当日の朝は、早めに起こし、すべてに時間的な余裕が持てるような行動を心がけましょう。
●早めに起きて、しっかりと朝食を摂らせる ●持ち物を最終チェック
●寒暖を調節できる服装を心がける ●弁当、飲み物、軽食等を持参
●最低でも30分前には着くように、余裕をもって早めに出発
②会場に着いたらトイレに行かせる、案内等の確認
会場に着いたらトイレに行かせ、気持ちを落ち着かせるように対応します。また、会場内に保護者向けの各種案内が掲示されている場合があるので確認します。
③トラブル発生時は、試験会場に連絡
遅刻しそうになったり、子どもが急に具合が悪くなって行けなくなったり等が起きた場合は、慌てず会場に連絡し、指示を仰ぎます。
④とにかく落ち着かせる
試験を受ける教室に着いたら、あまり細かな事を言わずに、心を落ち着かせ、自信を持って取り組めるように応援します。
⑤試験終了後はねぎらいの言葉
試験を終えてお子様が出てきたら、できばえを聞くのでは無く、「お疲れ様」とねぎらいの言葉を。あまりできなくて、がっかりして出てくる場合もありますが、詮索せずにそっとしておいてあげましょう。
家に着いてリラックスできたら、話を聞くように。疲れが残っているので、その日は好物を食べさせ、早めに寝かせるようにします。
⑥その後も続く場合は
併願状況によっては、数日間試験が続く事があります。緊張が解けない状態が長く続く場合は、なるべくリラックスできる環境づくりを心がけます。
まとめ
いかがでしたか?
受験生本人も、保護者もとても負荷がかかる中学受験ですが、中高一貫で子どもの個性を伸ばしたり、将来社会で活躍できる人材育成ができる事などを考えると、ぜひともチャレンジしたい受験生やその親がたくさんいるのもうなづけます。
そうであれば、できるだけ子どもの負担を減らし、効率的に受験準備をさせてあげたいですよね。
そのためにも、5年生までの準備と、6年生の戦闘モード期のスケジュール作りや、目標設定を行う事がとても重要となります。
ただし1番大切なのは、最も大切なことは、子どもの意志を尊重すること。ついつい親は、さらに上へと引き上げがちになりますが、子どもはそれについて行けずに取り残されてしまう可能性も。
受験はあくまでも「子どものためにある」ことを常に肝に銘じて、取り組みたいですね。
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